用途:住宅 |
構造:木造 |
規模:2階建て |
面積:132㎡ |
岐南町に建つ家族のための住宅である。
郊外にありながら、周囲は住宅と小規模な倉庫が密集している。
南側は倉庫の灰色の壁が視界を遮り、東西は両側に住宅が並ぶ。北側は道路を挟み、また倉庫が建つ。
この密集した場所の中央に計画地が位置しているため、初期段階から周囲からの「距離」の取り方に違いを持たせ、風の流れや光を取り込めないかと考えた。
敷地は南北に長い矩形で、南を大きく空けても風の通りや明るさは建物奥まで得られない。
そこで南北に貫く空地を設けて、建物をその隣に配置した。
建物南側は両隣の住宅と出幅を揃え、密集する建物群の唯一の風の通り道を遮らないようにした。
道に面する北側は駐車場を緩衝間とし、住居内のプライバシーと安全を確保した。
西側を背として建物を寄せ、設備や水廻りを集めた。
空地は、壁で対外的な玄関アプローチと、私的な庭とに分けられる。
内部では空地に面する壁に開口を設け、空地を「側庭」と扱うことで、日常生活において内部と側庭とが交差する広がりを持たせた。
室内空間は、1階にパブリックと水廻り、2階に各個室を配し、それらをつなぐ階段壁面の一部に、中空ポリカーボネートを採用することで、下階では、やわらかい光と気配が感じられ、階を上がると時度に閉ざされた場に変化するよう、個と共有が切り替わる場を設えた。
階段を上った先の廊下突き当りに開口部を設け、上下の空気の流れを作り、廊下から階段まで風道としての役割を担う。
もともと敷地内は水害対策のために、周辺地盤より80㎝ほど高くしていることも手伝って、2階からは倉庫の屋根を超えて視野が広がり、遠くに地域のシンボルとして親しまれる金華山と岐阜城を望む。
一筆書きの主動線に距離と要素の異なりを加える事で、各場所において表情の違いが生活に広がりを持たせる。